誤作動

連日の残業つづきで、みんな疲れ果てた顔をしている。エアコンが効いているとはいえ、狭いオフィスでパソコンに向き合っているものだから、余計に息が詰まるのだ。そんなところへ、機嫌の悪そうな課長が出勤してきた。課長は社員の挨拶を無視してひとり語りをはじめた。
「……ったくさ〜、梅雨なのに雨が降らんってどういうこと〜？　干からびちまうじゃないかよ、まったく……」
普段はにこやかで人当たりもいいのに、一度スイッチが入ってしまうと、後は坂道を転がり落ちるように下る一方だ。目の下に揃いのクマをこしらえた社員たちは、目配せでやり取りを交わした。そして課長管理担当のミズシマくんが、システム管理部にこっそり一報を入れた。
「課長が誤作動を起こしています。至急、点検してください」
間もなくやってきた作業要員が故障した課長の緊急点検をしたけど、原因は不明。来週には代替品の課長がやってくる予定だ。