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その犬は主人を心から愛していた。
毎朝、主人を見送り、夕方には帰りを待つ。
その日も、いつもと同じように主人を見送った。
だが、主人は帰ってこなかった。
犬はひたすら主人の帰りを待ち続けた。
しかし、どれだけ待っても主人は帰らなかった。

犬は主人を必死に探し回った。
主人が好きな場所、訪れそうな場所を何年もかけて探したが、人間すら見つけることができなかった。

人類は未知のウイルスによって滅んでいたのだ。
ロボットである犬の体はウイルスに冒される事はなかったが、経年劣化で錆びついていた。
やがて犬は、前足を立て腰を落とした姿勢で機能を停止した。

その姿は、かつて主人を待ち続けた『忠犬』そのものであった。
SF
公開:25/07/10 02:28
更新:25/07/12 12:44

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