七夕に摘蕾(てきらい)
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商店街の七夕祭り。並んだ笹飾りを眺めていると、はっぴに鉢巻き姿の職人が、笹に手を突っ込み、短冊を外しているのに出くわした。
「せっかく飾ったのに何してるんですか」
あわてて尋ねるが、職人は短冊を外す手を止めずに答えた。
「摘蕾です。願いのつぼみを摘み取って整えないと、綺麗な笹飾りになりませんから」
祭りの来場者が願いを込めた短冊を。苦情を言ってやろうと責任者を探す。
「これもだな。流してしまおう」
ぶっきらぼうにつぶやき、職人が次に摘んだのは、背の低い枝に結んだ小さな短冊だった。
『あまのがわがみれますように』
クレヨンで書かれたたどたどしい文字。カッとなって抗議する。
「子供の願いでしょう、なんて事を!」
「ここじゃなくて、もっとふさわしい場所に送るんですよ」
職人が高々と手を上げ、短冊を放す。
――頭上遥か。
無数の星が流れる光の川を目指し、小さな影が夜空をきらきらと泳いでいった。
「せっかく飾ったのに何してるんですか」
あわてて尋ねるが、職人は短冊を外す手を止めずに答えた。
「摘蕾です。願いのつぼみを摘み取って整えないと、綺麗な笹飾りになりませんから」
祭りの来場者が願いを込めた短冊を。苦情を言ってやろうと責任者を探す。
「これもだな。流してしまおう」
ぶっきらぼうにつぶやき、職人が次に摘んだのは、背の低い枝に結んだ小さな短冊だった。
『あまのがわがみれますように』
クレヨンで書かれたたどたどしい文字。カッとなって抗議する。
「子供の願いでしょう、なんて事を!」
「ここじゃなくて、もっとふさわしい場所に送るんですよ」
職人が高々と手を上げ、短冊を放す。
――頭上遥か。
無数の星が流れる光の川を目指し、小さな影が夜空をきらきらと泳いでいった。
ファンタジー
公開:25/07/07 13:43
ラジオ『月の音色』
月の文学館
テーマ:つぼみとシルエット
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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