いくつになっても

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 昼下がりの公園で、スーツ姿の男二人がベンチに座っていた。

「ユーチューバーのほうがいいかなあ」

「うちの会社は副業禁止だぞ」

「俺の話じゃないよ」

 痩せた男は、隣に座っているのは小太りの男を睨みつけた。それから言葉を続けた。

「うちの親戚が子役になるっていってきかないんだよ」

 小太りの男はのんきに笑うと、公園の向かいに建てられた幼稚園に視線を向けた。

「良い夢じゃないか。うちの子なんて恐竜になりたがってるから困るよ」

「ただ背が高いんだよなあ」

「そのくらいはいいだろ。大事なのは演技力じゃないか」

「歯がなくて滑舌も悪いんだよ。顔はいいんだけどなぁ」

「かわいそうに。何かの病気かい?」

「いや健康さ。毎日公園で走ってる」

「にしても親戚の話なんて初めて聞いたな。いくつなんだ?」

「今年で100歳になるよ」
その他
公開:25/06/30 19:03

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