ハエ
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「3番にお電話です」仕事中、内線でそう伝えられた。だから、デスクの上の電話機の、3番のボタンを押そうとした。ところが、3番のボタンに、一匹のハエがたかっていた。手で振り払う。ハエは逃げない。息を吹きかける。ハエは逃げない。俺は困った。このままでは、3番のボタンを押すと同時にハエを潰してしまうことになる。先ほど内線を受けてから、かなり時間が経っている。どうにかせねばならない。俺は給湯室に走っていき、殺虫剤を持ってきた。しかし、席に戻ると、3番のボタンは点灯しておらず、ハエもどこかに消えていた。こうして俺は、一つの取引先を失った。
ホラー
公開:25/06/28 17:41
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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