消し氷

日直ダリぃな…愚痴をこぼしながら早朝の教室に入ると、同じく日直の橘が氷で窓を拭いていた。
『何してんの？』
「今日も暑くなりそうだから、消し氷で窓の熱を消してたの」
『消し氷？』
「消しゴムみたいなもの」
窓に触れてみる。ひんやりしていて気持ちいい。しかも暑くならない。
「どう？いいでしょ」
頷く俺。窓際の席は暑さでしんどいから助かる。
『それ、俺にも使わせてくれよ』
橘の手からひょいと消し氷を取り上げるも指に激痛が走り、氷を落してしまう。
「大丈夫！？」
慌てた橘が両手で俺の指先を包み込む。
「ごめん。消し氷は素手で触っちゃいけないの。消し氷は体温も奪っちゃうから…ごめん…」
『いや、悪いのは俺だから気にしな-』
言葉が止まる。橘が俺の指先に息を吐きかけ温めてくれる。
そんな橘が可愛すぎて心臓が高鳴る。
橘の体温をもっと感じたい。橘が好きだ。
指よ。まだ体温を取り戻さないでくれと願った。