巨カニの憂鬱

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「ごちそうさん」

人間が一人、巨大なカニの看板の下をくぐって出ていった。



カニは内心で、ため息をついた。

カニは気付いたのだ。

同胞(カニ)を食わせる為のシンボルとして、自分が作られたことを。

これほどの屈辱はない。



見渡せば、同じ様な憂鬱を抱えているものが見える。

巨大なタコもまた、同胞を食わせる為のシンボルとして作られていた。。

たこ焼きは、タコの気持ちに反するように人気になっている。



かつては、巨大なフグもいた。

もちろん、ふぐ料理を食わせるためのシンボルである。



『はぁ』

カニは内心で、深くため息を付いた。

しかし、一番解せないのは他にある。

カニは、チラリとそちらに目を向ける。



そこには、ウイニングランを決めた人間の姿が描かれた看板があった。

もはやカニの理解を超えていた。

人間の食への探求は、業が深すぎないだろうか?
その他
公開:25/06/23 09:51

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