新しいサービス(妻編)

新しくできた植物園に夫と出かけた。年のせいか、少し歩くとすぐくたびれてしまう。夫は私に、飲み物を買ってくると言いおいて自販機に向かった。声をかけられたのはその時のことだ。
「すみませんが、シャッターを押してもらえませんか？」
振り返ると、若いカップルが申し訳なさそうに立っていた。まるで昔の夫と私みたいで微笑ましい。もちろん快諾した。
「濃い紫色の紫陽花がたくさん咲いているところがあったわ。少し戻るようだけど、そちらで撮影しませんか？」
「いいんですか？　ありがとうございます！」
写真を撮り、少しだけと思いながらお話して、とても楽しい時間を過ごさせてもらった。するとカップルはおもむろに一枚の封筒を差し出した。
「こちらは『親切料』です。当園のサービスのひとつとなります」
園内放送のおかげではぐれた夫とは無事再会できたけれど、画期的なサービスで三千円いただいたことは内緒にしている。