新しいサービス(夫編)

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新しくできた植物園に妻と出かけた。年のせいか、少し歩くとすぐくたびれてしまう。私は妻に、飲み物を買ってくると言いおいて自販機へ赴き、元の場所に戻った――が、彼女はこつ然と姿を消していた。
妻はスマートフォンを持っていないから、園内放送で呼びだしてもらうしかない。しかたなくサービスカウンターに向かい、用件を伝えた。するとなぜかよもやま話になり、気づけば愚痴を並べ立てていた。
「我が家の家事はぜんぶ私の仕事なんですよ。せめて洗濯物を畳んでもらうだけでも助かるのですがねぇ」
「奥さまに効率的な方法を伝授されたらいかがですか」
「なるほどそれも一理ありますねぇ」
耳を傾けてもらえる嬉しさでつい喋り過ぎてしまった。すると係員はおもむろに一枚の紙を差し出した。
「こちらは『傾聴料』の請求書です。当園のサービスのひとつとなります」
妻とは無事再会できたが、画期的なサービスに三千円支払ったことは言えない。
その他
公開:25/06/26 07:55
更新:25/06/26 12:19

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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