ジュースとの静かな戦い

2
2

 のどが渇いたので、ジュースを飲もうと冷蔵庫を開けた。



「開けないで……!」



 聞き間違いかと思ったが、間違いなくジュースの缶が話している。

 強引に飲もうかとも思ったが、口調が女性だ。

 どうせなら説得してからが良い。



「一人になりたいの」

 ジュースは頑なだった。

「いや、のどがかわいんたんだけど」

「飲むなら、明日にして。今、気分じゃないの」

「いや、飲む気分だから」

「男って、いつもそう。自分の都合だけを考えて」



 ピー、ピー、ピー。

 更に反論をしようとしたが、冷蔵庫の警告音が鳴る。



 お互い頭を冷やしたほうが良いようだ。

 俺は冷蔵庫の扉を閉じた。
その他
公開:25/06/25 16:42

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容