ジェントルミラー

「風邪をひいてしまいますよ？お嬢さん」

太陽の位置がズレたことに気づかず、影の中で体を丸めてお昼寝している猫を見つけると、カーブミラーは鏡面の角度を微調整して柔らかな陽だまりをそっとかけてあげました。

「引き続きよい夢を」

陽だまりの心地よさに猫が喉をゴロゴロと鳴らし始めたのを見届けると、カーブミラーはスマートな所作でお辞儀しました。


「そちらは少し見えづらいですね、お手伝いいたします」

薄暗い茂みで必死に餌を探す雀の親子を見つけると、カーブミラーは再び鏡面を調節して茂みまで陽光を伸ばしました。チュチュンと喜び跳ね回る親子を見て、カーブミラーは微笑みました。


「毎晩遅くまでお疲れさまです」

夜道を歩くサラリーマン。今日は仕事がうまくいったのだろう。表情でわかる。

カーブミラーは鏡面を調節して街灯の明かりをビールジョッキ形に反射させると、サラリーマンの影にそっと乾杯した。