落としましたよ

雨上がりの登山道。私は足を滑らせ、山の斜面を滑り落ちた。
何度も体を打ち付け、あちこち擦り傷と切り傷だらけ。泥と雨水をたっぷり吸いこんだ服は重く、私の体力をじわじわと奪っていく。助けを呼ぼうにもスマホは完全に壊れている。
救助が来るまで待つしかない。そう思っていると、目の前にクマが現れた。
最悪だ…血のニオイをさせている私はエサに見えていることだろう。
クマが私に近づいてくる。
私はここで命を落とす…そう思っているとクマが私に何かを差し出した。これは…私のイヤリング？
「もしかして、これを届けに来てくれたの？」
こくん、と頷くクマ。
ほっとしたのと同時に、緊張の糸が切れた私は意識を失った。

次に目を覚ますと私は病院のベッドに横たわっていた。
どうやら私は、心優しい森のクマによって病院へと運ばれてきたらしい。
森のくまさんはイヤリングだけでなく、私が落としたと思った命を拾い、助けてくれた。