落としましたよ

私はかつて、誰もが憧れる完璧な母親だった。それが正しい母親像だと思っていた。
それは間違っていた。私が完璧であればあろうとするほど、理想とかけ離れていく。
だから私は落とした。満点の母親ではなく、及第点の母親になると決めた。
すると凄く楽になった。
いつも完璧に仕上げていた掃除。隙を見せると、夫がロボット掃除機を買ってきてくれた。
ペットの飼えない我が家で、家族が掃除機をペットのように可愛がる。
食卓に冷凍食品が並ぶ。プロの料理人が監修した冷凍食品。おいしくないわけがない。
定番のおかずから凝った料理まで何でも揃う為、食べたいものを聞くと「なんでもいい」と答えていた子供たちが冷凍食品の名を挙げる。
そこに多少複雑なものを感じてしまうも、料理の手間が省けるのはありがたい。
満点の母親だった頃、誰も私に話しかけてこなかった。
及第点の母親となった今、ママ友と母親の点数を上げる為の会話も増えた。