リーダーは夢の中

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オフィスが入ったビルのエントランスをくぐると、警備員の雪島氏が声をかけてきた。
いつもなら二言三言会話するのが習慣だけれど、今朝は時間がない。急きょ設定された会議に間に合うよう、資料に目をとおしておきたいのだ。
「雪島さん、また明日」
「はい、行ってらっしゃいませ」
氏は爽やかに私を送りだし、後から来た社員に挨拶している。意図するところを素早く察知する能力は、さすが勤続二十年といったところだろうか。
エスカレーターでオフィスのある階に向かい、廊下で電子キーをかざす。ここでまさかのエラー。するといつの間に追いついたのか、氏が私の手を引いた。
「サーちゃん、『社長ごっこ』は終わり。おばあちゃんが迎えに来るからこっちで待ってなさい」
「はーい」
表面上は素直な四歳の女の子を装い、心のなかで舌打ちした。昨日の夢ではほんとに社長だったのに。
明日はもっと本物寄りの社員証を作ってこようと思った。
その他
公開:25/06/19 03:20

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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