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病院へ向かう途中。河川敷で子ども達がタンポポで遊んでいるのを見て懐かしくなった。同時に「草花に構うな」と怒鳴る父の貌を思い出した。
父は職場でも家でも“教師”だった。家中の女を打って俺に手本を示した。だから、それに倣ってきたつもりだ。父のようにたくさん吼えた。だのに、恋人たちは俺の伴侶になることを拒否して去って行く。
子どもの口元から流れ出す綿毛が、だんだん煙に見えてきた。
生来、肺が弱いせいで喫煙とだけは縁がない。父も同じ体質だった。思えば、その欠陥が却って父の烈しさの源になっていたのかもしれない。
タバコだって草花じゃないか。
土手から降りて、タンポポの茎をむしる。
獰猛な父はもういない。幾ばくかの安堵と哀しみを吹きつけると、綿毛は中空に滞り、革靴の尖で白い塊になった。
子どもたちが口々に文句を言う。
「風、来なくなっちゃったね」
「タンポポ飛ばないね。もう家に帰ろうよ」
父は職場でも家でも“教師”だった。家中の女を打って俺に手本を示した。だから、それに倣ってきたつもりだ。父のようにたくさん吼えた。だのに、恋人たちは俺の伴侶になることを拒否して去って行く。
子どもの口元から流れ出す綿毛が、だんだん煙に見えてきた。
生来、肺が弱いせいで喫煙とだけは縁がない。父も同じ体質だった。思えば、その欠陥が却って父の烈しさの源になっていたのかもしれない。
タバコだって草花じゃないか。
土手から降りて、タンポポの茎をむしる。
獰猛な父はもういない。幾ばくかの安堵と哀しみを吹きつけると、綿毛は中空に滞り、革靴の尖で白い塊になった。
子どもたちが口々に文句を言う。
「風、来なくなっちゃったね」
「タンポポ飛ばないね。もう家に帰ろうよ」
その他
公開:25/06/14 15:48
令和7年4月から参加の新参者です。
当初はとりあえずやってみようの精神で投稿していましたが、
最近はもっとSSを勉強したい、上手く書けるようになりたいと思うようになりました。
若輩ですがよろしくお願いします…!
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