海への接し方

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礼儀正しい怪獣がいた。
下手な人間より作法が正しく、見習う人間も出てきた。
大きいので、見習うのにこれほど都合のいいものもなかった。

ある時怪獣は、海を見て立ち止まった。

『なんだ?』
『なにか作法があるのか?』
人々は訝しがった。

怪獣は人の視線を気にせず、海に向かって頭を下げた。
「不躾に見てしまって、申し訳ありません」

これを見た人間は、衝撃を受けた。
衝撃を受けた人間のうち、全員ではなかったが、間違いなく影響が出た。

「つい見とれてしまっていました、すみません」
「今日は泳ぎに参りました。失礼します」
妙に海に気を使う日本人が、増えたのだ。

その様子は海外で、ニュースになるほどだった。
日本が見習われるのか、クレイジーと言われるのか。
それはまた、別のお話。
ファンタジー
公開:25/06/16 09:39
皮肉屋さんの小噺

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