落としましたよ

「その紅茶。不幸を入れると甘くなって美味しいわよ」
母の言葉に義母が首を横に振る。
「いいえ。その紅茶には幸福を入れるべきよ」
幸福？不幸？何の話だ？私はただ、母と義母からお茶会に誘われただけで…
首を傾げる私に母が不幸を落とした紅茶を勧める。
啜ると『欲しかった服を通販で買った翌日、半額になった』という不幸の味が私を襲う。
思わず苦笑いしてしまった。
「ほら、やっぱり幸福の方がいいじゃない」と義母。
幸福を落とした紅茶を勧める。
啜ると『夫が家事を手伝ってくれた』という幸福の味が私を襲う。
小さな幸せだけど、それがいい。それに比べ母の不幸ときたら…
ムッとする母。私の不幸を紅茶に落とすよう言ってきた。
やり方を教えてもらい、私の『夫が仕事から早く帰って来てくれない』という不幸を二人に飲ませた。
「「これで不幸だなんて、甘いわね」」
母と義母が懐かしいものを見るような目で私を見た。