アノヨトラベルクリニック

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気づいたら診療所らしき建物の待合室にいた。備品には『アノヨトラベルクリニック』と書かれている。ぼんやりしていると診察室の扉が開き、私の名を呼ばれた。不調もないのに診察を受けるのは抵抗があるが、暇を持て余していたので素直に小部屋に入った。そこには私よりヨボヨボの老齢医師がいた。
「九十九歳! 大往生ですな〜」
一気に血の気が引いた。
「先生、私は死んだのですか?」
「えぇ。眠ったままね〜」
「そんな……」
百まで生きるのが目標だから生き返らせてほしいと懇願したが、つめたく突き放されて終わった。
こうなったら意地でも目を覚ましてやると誓い、修行を始めた。意識を集中し、開眼する――それを根気よく繰り返すと、ついに我が家の寝室に戻ることができた。しかし喜びは束の間だった。件の老齢医師が傍らにいたからだ。
「御臨終です。良いあの世の旅を〜」
私は悔し涙を流しながら息を引き取った。
ファンタジー
公開:25/06/12 09:25

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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