チョウと人間
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私がアルバイトをしている図書館に、毎日、一匹のチョウが、入ってくる。そのチョウは、花の図鑑がある書架へ飛んでいき、図鑑の表紙の花の写真に向かって、長い口を伸ばしている。そして、蜜が吸えないとわかると、落胆した様子で、入り口から外へ飛んでいく。そのチョウは日に日に衰弱していき、ある日とうとう、図鑑の真下の床で死んでいた。すぐ近くの窓から見える図書館の中庭には、花壇があり、花々が咲いているというのに。私はチョウの死骸を片付けた後、先輩に、チョウが死んだこと、花壇のことを話した。「きっと、そのチョウ、前世は人間だったんだよ」と先輩は事もなげに言った。
ファンタジー
公開:25/06/11 17:04
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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