4
4

「くそっ、なんて暑さだ…」

男は汗をハンカチで拭いながら、焼けたアスファルトの上を歩いていく。
街路樹に張り付いた蝉の声がうるさく響く中、駅へと急ぐ。
「こんな日に、何でこんな事を…」と、男は舌打ちした。

視界が変わると、そこは海だった。
波の音、潮の匂い。
男は、どこか懐かしいその景色に目を奪われた。
「これが…昔の海...」

男は思わず、海に向かって走り出した。

次の瞬間、視界が暗転した。

「『夏』体験版は、いかがでしたか?」
無機質な声が響き、カプセルのハッチが開いた。

「これが氷河期前の『夏』…」
目を輝かせ、汗と海の記憶を思い返した。

「最初は暑さに参ったけど、あの海は最高だった。有料版もやるよ。」

男は笑顔で端末に手を伸ばし、料金を支払った。
SF
公開:25/06/11 01:28
更新:25/06/11 01:32

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容