2
6

新しい靴を買いにいった。フィット感で失敗しがちなので、さっそく店員にたずねた。
「羽根のように柔らかくて軽い靴ってありますか?」
店員は弾けるような笑顔を浮かべ、新商品の棚から一足の靴を持ってきた。
「こちらはいまイチオシの品物となっています。どうぞ試着してみてください」
靴が自ら履かれにくると力説するため、半信半疑で右足を差し込んだ。刹那、味わったことのない感動に包まれた。
「本当に靴から足を迎えに来ましたね。フワフワしていて、まるで鳥みたい!」
「『鳥靴』といいます。よろしければいかがですか?」
「もちろん買います」
店員は声の調子をワントーン落として言った。
「夜はタオルをかけた鳥籠で保管してくださいね。そうしないと家に帰りたがって鳴きますから」
冗談だと思って購入したけれど、昼間も犬の声に反応して飛ぼうとすることに気づいた。森か山に放靴すべきではないかと真剣に悩んでいる。
ファンタジー
公開:25/06/10 21:33

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容