時には、父もスマートに

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娘が妙に体をくねらせて、感嘆していた。
「どうした? 好きな男でもできたか?」
「そんなんじゃないよ。今日お昼にフレンチ食べたんだけど、そこの店員さんの物腰が上品でさ、『お口に合えばよろしいのですが』とか言うの。お父さんは、絶対に言えないよね」

娘にバカにされた父は、絶対にどこかで言ってやろうと思っていたが、職場でさっそくその機会が巡ってきた。

「お口に合えばよろしいのですが」

そう言われた客の老婆は、みるみるうちに顔を紅潮させた。

「それを合わせるのが、お前の仕事じゃろうが!」

老婆は口角泡とともに、出来たばかりの入れ歯を飛ばして激昂した。

こうして娘の警告は、ムダになったのだった。
その他
公開:25/06/09 05:53
皮肉屋さんの小噺

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