刑務所は満員

先端的運営で有名なＱ市刑務所所長室では所長が椅子に沈んで回想にふけっていた。

ちょうど十年前だ。受刑者の外出許可を始めたのは。Ｑ市内での外出を認めた。彼らは問題を起こさずに、約束の時間に戻ってきた。そして外泊を認めたのは三年後。三日間までのGPS付き外泊を認めた。彼らはＱ市から出ることなく戻ってきた。受刑者教育が素晴らしいと所長の私は総理大臣から表彰された。時代は変わった。刑務所は懲罰ではなく、受刑者の社会復帰を支援する場所とされ、わが刑務所は社会から注目された。受刑者にはさらに大きな自由を与えた。家庭を持つ者は何泊でも家に帰る事を許した。中には働いている者もいたが彼らは必ず戻ってきた。さらに他の刑務所からも移動を希望する受刑者が増えた。刑務所は拡張工事を行い、受刑者はどんどん増え、今やＱ市人口に匹敵する。ここは本当によい居場所なのだ。今日も一日が終わる。帰宅しよう。もちろん私の独房へ。