稽古ペン

2
2

だめだ。日本史の試験が迫っているのに全然勉強に集中できない。教科書を開くと何だか落ち着かないのだ。文章が蠢いているかのようで眩暈すら覚える。こういう時は、場を乱す未熟者が紛れているもの。ここは稽古ペンの出番だろう。

私はペンのキャップを外し、その切っ先を文章の先頭に構える。
いざ、参らん。

一行目から順番に、私は文字たちに切っ先を向けて行く。腰が据わった文字に触れる必要はない。

私が視ているのは常に“先”だ。実はこのペン先には小さな窓が嵌め込まれている。次に来る文字を見極めるための窓だ。そこに、「荘」が隣の文字と小突き合っている姿が映った。

お前ら…隙ありッッ!
「荘園」たちは黄色い斬撃を受けて大人しくなった。

見開き2ページにわたる稽古の結果判明したことは、まだ鍛え上げが必要な文字列が20近くもあることだった。
その他
公開:25/06/08 17:26

紅石紗良( 北陸 )

令和7年4月から参加の新参者です。
当初はとりあえずやってみようの精神で投稿していましたが、
最近はもっとSSを勉強したい、上手く書けるようになりたいと思うようになりました。
若輩ですがよろしくお願いします…!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容