落としましたよ

美食家気取りの夫は私の料理にケチをつけてくる。
文句があるなら食べなくていい。そう言うと、拗ねて外食ばかりし始めた夫。
このままでは夫の健康も、夫婦の関係も壊れてしまう…仕方がない。あの店に行くか…

私のお勧めの店を鼻で笑う夫。SNSに掲載されていないからだろう。
だが料理を口にするや無我夢中で食べ進める。あまりの美味しさにほっぺたが落ちている事に気が付いていない。
店員さんがそれを拾い、夫に声をかけようとする。
私はそれを止め、夫のほっぺたを預かった。これでもう夫には膨らます頬がない。拗ねる心配がない。
ほっぺたが落ちた夫は目じりも下がる。私にこれまでの事を謝ってくれた。
ほっぺたが落ちた事で夫は優しくなった。
その姿に笑顔を浮かべる息子。だけど今、そこに自慢のえくぼはない。
女性店員さんがほっぺたを拾い、息子の頬につけてくれた。
紅い頬でもじもじする息子。
恋に落ちたな…と確信した。