蘇る最悪の記憶

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中国物産展で、怪しい薬が売られていた。
脳に刺激を与え、自身の忘れていたい記憶を呼び覚ますという。

一個三百円。
値段すらも怪しい。
しかし、好奇心には抗えない。
どうせ大した人生ではないのだ。

「ええい、買った」
勢いに任せて金を払い、買ったその場で店員の目も構わず、グビリと飲んだ。

しばし遅れて、最悪の記憶が脳裏に蘇った。
「うわぁあああああ、宝くじの引き換え期限過ぎてる!」
私は思わず、叫んでいた。
「え? 大金が当たってたんですか?」
「わかんないが、連番で買ってたんだ」
「じゃあ、はずれてるかもしれないじゃないですか」
店員の言葉に、私はカッとなった。
「バカを言うな! 連番なら確実に三百円は手に入る。この薬も無料になってたかもしれないんだぞ」
店員はしばし、呆気に取られていた。
「……お客さん、人生楽しいでしょ?」
店員はそれだけ言うと、店の奥に帰っていった。
ファンタジー
公開:25/06/09 20:46
皮肉屋さんの小噺

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