長雨の理由

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ビニール傘の向こうは鈍色。
雨も降らなきゃ困るが毎日だと気も滅入る。梅雨は苦手だ。

「…なるほど、仲良しの烏が最近顔を見せないのか…心配だな」

ノロノロ歩いていると、カーブミラーの隣で何か話している茜色のレインコートの人がいた。

「今年の夏はここで一緒に花火を?素敵な約束だな!」

よく見るとレインコートさんと会話するようにカーブミラーが明滅している。

「…なら、笑ってごらん」

明滅が止まる。

「…笑える気分じゃないかもしれない、でも君が笑えば待ち人…いや、待ち烏はきっとくる。この空模様じゃ、ここへ飛んでこられないんだ。だから笑って。だって…」

レインコートさんは曇天を見上げる。

「空は君の表情を真似るんだから」

一瞬の間の後、カーブミラーが涙をこらえて笑うように光った。

雨が止む。
空が明るくなっていく。

水色に光り出した空を全速力で突っ切って、烏が一羽飛んできた。
ファンタジー
公開:25/06/05 11:00
雨の日はカーブミラーを 笑顔にしたらいいかも 予約投稿

花笑みの旅人( 気の向くまま )

ページを開いてくださり、ありがとうございました!

※6月12日〜6月末まで、色々と鍛える為に毎日投稿にチャレンジ中で〜す(⁠◔⁠‿⁠◔⁠))
若干カーブミラーに取り憑かれた人みたいになっていますが、概ねその認識で間違いはない

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