ミュージアム・デイ

「恋、しちゃったかもしれない」
「は？」
　玄関でふざけたことを抜かす夫。休日に、しかも子連れで出かけた帰りに……いい度胸だ。掴みかかる私の勢いは、子供たちの声で打ち消された。
「おとーさんねー、ずっと絵を見てたの」と娘。
「恐竜の化石を見に行ったのに『こっちも勉強だー』なんて言ってさ。美術館の時間の方が長かったよ」と呆れる息子。
　頭をかきながら夫が続けた。
「無料開放されててさ。絵画って意外と良いものだね」

　聞けば、ある画家の絵がとても気に入ったのだと言う。どんな絵かは「女の子の絵！可愛かった！」と娘が教えてくれた。
　不機嫌を察知したのか「色彩が本当に綺麗でさ。そんな顔しないでよ、僕の一番はいつも君だから」なんて真顔で言うもんだからこっちも照れる。

　色々興味を持つのは尊敬できる。真っ直ぐに愛情を表現する所も素敵だと思う。
　それに、私の魅力が絵画なんかに負けてないのは明白だ。