漁師

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言葉は降ってくるものか、湧き上がるものなのか。
それは私にはわからない。

わかっているのは、今まさに言葉がうねりとなって、私を飲み込もうとしていることだけだ。

粘りのある海に引き摺り込まれると、千切れた言葉たちの無数の囁きや呻きが聞こえる。
深く沈んでいくほどに、それらは低く、大きくなっていく。

息を止め、耳を澄ませ、千切れたものたちを繋ぎ合わせ、意味を与えるのが私の仕事だ。

新たな意味を与えられた言葉たちは、煌めきながら水面へと上がっていく。
やがて夜空へと到達し、星になるのだ。
その他
公開:25/06/01 21:06
更新:25/06/02 11:26

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