冥土喫茶
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霧が立ち込める蒸し暑い夜の事。男は未解決殺人事件の容疑者、タケシを追っていた。
「疲れた」
ふと見つけた古びた喫茶店に足が引き寄せられる。
店内は誰も居らず、とりあえず椅子に座り「すいません」と店員を呼んでみる。
「いらっしゃい」
無愛想な若い男が現れた。その顔に自然と「え?」と言葉が漏れる。が、注文したコーヒーが運ばれてきた時、確信に変わり目をまん丸くした。未解決殺人事件の容疑者、タケシだったのだ。
「タケシ……なのか?」
「黙ってコーヒーを飲みな」
震える手でコーヒーを飲み干すと、苦味と共にタケシの記憶が流れ込む。
——20年前、恋人を殺害し、逃亡した夜の情景。その記憶の最後で、タケシは崖から身を投げていた。
「お前……」
「ここは、身近な人に一度だけ会える喫茶店。ごめんな父さん……俺。バカやっちまった」
男は言葉を失い店を出る。振り返ると、喫茶店は霧の中に消えていた。
「疲れた」
ふと見つけた古びた喫茶店に足が引き寄せられる。
店内は誰も居らず、とりあえず椅子に座り「すいません」と店員を呼んでみる。
「いらっしゃい」
無愛想な若い男が現れた。その顔に自然と「え?」と言葉が漏れる。が、注文したコーヒーが運ばれてきた時、確信に変わり目をまん丸くした。未解決殺人事件の容疑者、タケシだったのだ。
「タケシ……なのか?」
「黙ってコーヒーを飲みな」
震える手でコーヒーを飲み干すと、苦味と共にタケシの記憶が流れ込む。
——20年前、恋人を殺害し、逃亡した夜の情景。その記憶の最後で、タケシは崖から身を投げていた。
「お前……」
「ここは、身近な人に一度だけ会える喫茶店。ごめんな父さん……俺。バカやっちまった」
男は言葉を失い店を出る。振り返ると、喫茶店は霧の中に消えていた。
その他
公開:25/05/31 01:21
勉強中が故、感想を頂けたら幸いです。
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