鶏の言葉

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 養鶏場の長だった男が死に、墓の下に骨が埋められた。ある夜、その墓を、一匹の雌鶏が訪れた。雌鶏は墓前に座り込み、やがて明け方頃、一個の卵を産んだ。そして、墓を見つめながら、「あなたの子よ」と言った。もちろんそれは鶏の言葉だったので、「コケケ」としか聞こえなかった。そして、雌鶏は、産んだばかりのその卵を、くちばしでつつき、砕き割って、とぼとぼと墓地を立ち去った。その後ろ姿を、朝日が照らしていた。やがてどこかで、雄鶏たちが鳴き始めた。
ファンタジー
公開:25/05/30 17:40

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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