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その森に名前はない。一部の愛好者は音楽の森と呼ぶ。ひっそりとした小径を訪れる人は少ない。訪問者は一人用テントを持って行く。ソロキャンプである。小川のそばにテントを張って夜まで待つ。夜食を済ませるとテントの横でじっと待つ。焚き火はしない。あたりにはもちろん誰もいない。せせらぎとフクロウの声。ざわざわと木々の音。それと森の振動というか、ぼわあんと響く音も聞こえる。それらの音のなかで待っていると、ぴたりとすべての音が止む。真夜中。全くの沈黙の森に、どのくらいか時間が過ぎると音が聞こえはじめる。鳥でもなく小川でもなく木々の音でもない。何とも言えない聞いたことのないような音が聞こえ、変化する音楽となる。音楽に聞きいるうちに我を忘れる。はっと気がつくと小鳥の鳴く声に朝が来たことを知る。森の音楽はいつも聞こえるわけではない。何度か通ううちにたまに聞くことができる。聞いた者は満足感のうちに森を出る。
その他
公開:25/06/01 10:34
更新:25/06/01 10:35
更新:25/06/01 10:35
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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