流行

　最近、若者の間で、死体を背負って街を歩くのが流行しているので、その取材に行った。街は死体を背負った若者たちでいっぱいだった。同行したディレクターの指示で、その若者たちに声をかけた。「その死体とはどういうご関係なんですか？」「その死体はいつ死んだんですか？」「重くないですか？」取材したデータを局に持ち帰り、編集していると、ディレクターがやってきて、僕に言った。「お前が声かけたの、美人ばっかりだな」僕は言った。「男の子もいましたよ」ディレクターは言った。「違うよ、死体の方だよ」映像データをよく観返すと、確かに、美人の死体を背負っている若者にばかり僕は声をかけていた。僕にはそういう性癖があるのかもしれない。