名画でショート061『悔悛するマグダラのマリア』(ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ)

背中から薄暗い壁が迫ってくる。
娼婦として得た金品は、何の役にも立たなかった。宝飾類は体から離れ、住居には家具も人の気配もなく、若さも徐々に抜けていく。
全てを失いつつあることに気が付いたマリアは、絶望のあまり、薄暗い壁にもたれかかる。
いつかこの壁が、私を飲み込んでくれる。
いつかこの壁が、私を新しい世界につれていってくれる。
マリアは全ての装飾品と財産を手放し、質素な服だけを身にまとい、壁に願いを込める。
だが、壁はただ壁であるだけ。
薄暗い部屋の中で、マリアは、絶望の淵に身をゆだねる。