大漁
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堤防で、二人の少年が海に釣り糸を垂らしている。「きたっ!」少年の一人がリールを巻く。釣り針の先には『イワシ』と書かれた一枚の紙が引っかかっている。「俺、イワシ釣ったぜ」もう一人の少年もリールを巻く。そして釣り針を引き上げる。釣り針には『アジ』と書かれた一枚の紙が引っかかっている。「俺、アジ!」そんな風にして、少年たちは、次々と、魚の名前が書かれた紙を釣り上げる。そして、クーラーボックスが紙でいっぱいになった頃、少年たちは帰路につく。「大漁だったな!」そんな少年たちを、一人の老人が、遠くから見つめている。老人はペンダントを着けている。そのペンダントには、最後の本物の魚から剥いだ鱗が一枚、納められている。
SF
公開:25/05/28 17:39
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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