地の底へ!

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 夜眠ると、私は鳥になっていた。
 太陽照りつける大海を羽ばたいている。渡り鳥だ。夢にしては臨場感があり、前世の記憶なんだと思うことにした。
 広い海に浮かぶ小さな孤島。そこにポツンと深い穴があった。体力も尽きかけていた僕は、いっそのこと穴に落ちてみることにした。
 重力に身を任せて、落ちる。落ちる。どこまでも。

 地獄の底は冷たい場所らしい。ふと、そんな話を思い出した。
 地獄といえば、業火に灼かれたり責苦に叫んだりといったイメージだ。だが、その果てには魂まで凍てつく氷の世界が広がっているらしい。ある詩人の旅では極地を通り過ぎ、地球の反対側へと昇っていったという。

 鳥の僕が行き着く先は、今の私だ。
 人間の暮らしも楽じゃないけど、上手くいかないことも多いけど、僕は、私として生きることに焦がれている。
 無気力な自由落下から、意志を持った下降へ姿勢を変える。
 ――さぁ、ここからだ。
その他
公開:25/05/28 02:19

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

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