名画でショート060『快楽の園』(ヒエロニムス・ボス)

扉を開くと、そこには生まれたばかりの地球があった。
誕生したばかりの人間と動物、さらには植物たち。いかにも平和な光景。だれもが余裕を持ち、水辺ではユニコーンが夫婦で仲良く水を飲んでいる。
しかし、人類が際限なく増え続けると雰囲気が変わる。地球は過密化し、建物が増え、美しい泉にまで不格好な塔が押し込まれる。
地球の過密度が限界に至ると、世界の崩壊が始まる。大地は黒く染まり、泉はどぶとなり、見たこともない奇妙な生物が増えていく。
地獄の王子が世に放たれ、拷問される人間たちを楽しそうに眺め、食欲もないのに口を動かすためだけに人間を食らう。
人間の心臓は楽器にされ、体の中には寄生虫たちが楽しげな宴を始める。
全てが限界を迎えた時、扉は締められる。
閉められた扉に、天地創造の図が描かれる。
新しい扉を開くと、そこには生まれたばかりの地球があった。