大つち小つち

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森をひらいて家を建てることにした。
借りた軽トラで現地に乗り付けると、さっそくチェーンソーを使って杉の大木を切り倒しはじめた。
見知らぬ爺さまがそばに座っているのに気づいたのは、持参した握り飯を頬張っていた時のこと。
爺さまはやけに古風な煙管をくわえながら、ぼそぼそと口をきいた。
「ここら一帯、ぜんぶ切るの?」
変な老人だと思ったが、不意の話し相手はうれしかった。
俺は上機嫌で答えた。
「はい、まぁ、梅雨がくる前までには」
爺さまは握り飯をちらちら見ながら言った。
「今は大つちでな、本当は木を切ってはならんのよ。小つちの時も同じ。土の神が地中で寝とるからな」
この流れだと爺さまは土の神様なのだろうと思い、頼まれてもいないのに握り飯を差し出したが、中身が梅干しと知るなり、爺さまは悪態をついてどこかへ消えた。
爺さまが神様だとしても相性が悪そうなので、建築はあきらめた。
その他
公開:25/05/22 16:55

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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