リトルダンサー

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窓を開けると、五月の風とともに二本の綿毛が忍び込んできた。
校庭の隅っこにひっそり咲いていたタンポポのものだろうか。
彼らはふいに狭まった世界を右往左往して、ひとつはカーテンに絡め取られ、もうひとつはどこに舞い降りようか慎重に見定めながら天井付近をさまよっている。
だれにも見つからないようこっそり祈っていたけど、わたしが行く末を見守っていたものだから、うるさい男子連中に知られてしまった。
そのなかでも極めて目立っている山本くんは、教科書でパタパタ仰ぎながら彼の進路妨害をはじめている。
だからわたしは大声でとがめた。
彼に自由を味わわせたいから。
そして、わたしの好きなひとに嫌われたいから。
好きなひとには恋人がいる。
きっとこの先も振り向いてもらえない。
それならいっそのこと、クラスで一番苦手な女子になりたいのだ。
わたしの歪んだ恋心をあざ笑うかのように、綿毛は廊下に躍りでていった。
青春
公開:25/05/24 22:54
更新:25/05/25 03:20

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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