はじめての

殺し屋の俺が最初に殺したのは自分自身だった。
だから悪人は元より女子供を殺しても何も思わない。殺してしまえば皆死体だ。
怪我を負っても眉一つ動かさない。激痛？それで意識が保てるのなら丁度いい。
機械のように淡々と殺し続ける。失敗は許されない。
そんな俺が失敗した。
俺が殺そうとした相手は純真無垢で、額に銃を突き付けられてもきょとんと首を傾げるだけだった。
それがおかしくて、つい笑ってしまう。
そんな俺に、頬を膨らましては不機嫌を露にする相手。
その瞳に映る俺は冷酷な殺し屋ではなく、ただの人だった。
ただの人に、人は殺せない。
俺は銃を下ろし、立ち去った。
こんな気持ちは初めてだ。下手をすれば今後の仕事に支障が出る。
アジトに戻り次第、再び自分を殺そう。
…その必要はなかった。俺の胸に真っ赤な花が咲く。
失敗したんだ。当然だ。
薄れゆく意識の中、人として死ねるのなら、それも悪くないと思った。