はじめての

友達と遊んでいたらすっかり遅くなった。急いで家に向かうもこのままでは門限に間に合わない。
だから僕は近道を使う事にした。いつもは友達と一緒に通っているこの近道。一人で通るのは初めてだけど…大丈夫だよな。
いつも通っている昼間とは違い、暗闇で満たされる近道。細い脇道から僕を捕まえようと怪しい手が伸びてくるかもしれないと思うと怖くなって足も速くなる。
だけどいくら走っても近道からは抜け出せない。
怖い！僕は涙で顔をグチャグチャにしながら走った。

ハッと目を覚ます。ここは…家？
「ようやく目を覚ましたわね」と母。
怒られる…と身構えるも、母は僕の頭を優しく撫でてくれた。
「あんた、森の入り口をグルグルと走り回った挙句、木に激突して倒れたのよ。驚いたわよ…一体どうしたの？もしかして、狸にでも化かされた？」
その言葉に、あっ！と気づく。
狸の嘘は見破った僕だけど、狐は初めてだから化かされたんだ…