おいしい恋の切り出し方

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「・・・大人になったのかな」

昔好きだった人、想いを伝えることは出来ないまま卒業、そのまま会うことは無かった。

重ねた年月は少年を男性に、少女を女性に仕立て上げる。

私が恋愛を見つめるとき、ホールケーキを思い浮かべる。このままでは食べきれない。

「自分の手元に来たピースだけを私は恋と呼ぶのかもしれない」

ある日、会社の同僚が誘ってくれたビリヤード。

「もしかして」

そこに居たのは好きだった人。向こうは気が付いてない。何回か繰り返し会い、ビリヤードを教えて貰い上達していく。

「でもホールケーキがピースにならない」

目の前のケーキを見つめる私。

しばらくすると懐かしい香りがしてきた。

「これ、昔から好きでしょ」

彼が持ってきたのは高校の購買で売られていて、いつも食べていたアップルパイ。

「はい、好きでした」

私はピースに切られたアップルパイを食べ始めた。
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公開:25/05/20 01:17
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松下一成( 長野県 )

1989年長野県工業高校・工業大学で電気電子工学を学び設備系の会社へ就職。2019年諸事情により退職しました。以後物語を書いています。物語を通じて「自分」を振り返り見つめなおすこと。それは「答えは常に自分の足元にある」ということでもあります。「こんなのあったらおもしろそうだな」って世界を描きたいです。  【X】https://x.com/kazunari_UN【Instagram】https://www.instagram.com/kazunari.matsushita/【note】https://note.com/matsu_ine_zu

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