鯉のぼり

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おじいちゃんの車椅子を押して山田さんの家を訪ねると、ちょうど鯉のぼりを上げ終わったところだった。
おじいちゃんはにこにこしながら山田さんに声をかけた。
「おはようございます。今年も見事な景色ですねぇ。一、二、三……おや、一匹増えましたか?」
「えぇ、孫が生まれたんです」
「そうでしたか。それはおめでとうございます」
「一緒に住んでないのですが、ついうれしくなってしまって」
「わかります。私も孫が生まれた時、天にも昇る気持ちでしたから」
山田さんは目を細めながら応じた。
「だから鯉のぼりを上げたくなるのかもしれませんね」
「なるほど。きっとそうですよ」
鮮やかな七匹の鯉は、初夏の空を気持ちよさそうに泳いでいる。
二人のご老体の気持ちはわたしにはまだ理解できないものだったけれど、おじいちゃんが大切に思ってくれているのはうれしかった。
わたしも鯉のぼりを掲げたくなった。
その他
公開:25/05/15 09:35

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintを使っています。

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