ヒラリひらり

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 ひらひらと、二匹の蝶が舞う。
 近づいたり、離れたり。遊んでいるのか、ツガイだろうか、或いはもしかしたら、別にお互いを認識してすらいないかもしれない。
 休日の午後、いつもの散歩道をゆく私は、一人。

「去る人は追えないよ」
 あの人の言葉を思い出す。そう、離れていく相手に執着しても仕方ない。
「別れよう」と、口にしたのは、私。
 些細な行き違いだったり、会話のちょっとした違和感だったり、今思えばどれも大したことないような気もするけど、色々なことが積み重なってしまった。
 安易に言ったつもりはなかったけど、100%本気でもなかった。ただ、引き留められることもなく、あまりに淡白に成立した別れに、後悔もしている。もし、しがみつかれでもしたら華麗に振り払ってやったのに。

 蝶たちはいつの間にかどこかに消えていた。
 清涼菓子を一粒取り出して口に入れる。
 ああ、見上げた空は、こんなにも青い。
青春
公開:25/05/15 01:58

いぬさか( 関東 )

初心者ですがよろしくお願いします。
心に浮かんだシーンを気ままに描いていきたいです。
同名で NOVEL DAYS でも活動しています。

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