レトロ缶

リサイクルショップで働く私は、今日も店の裏で古い商品相手に一人黙々と作業を進める。
ブラウン管テレビ。黒電話。カセットテープウォークマン。一眼レフカメラ。
今やスマホ一台あれば全てなんとかなるそれらだが、わざわざ買いに来る客は意外と多い。
これらの商品にはエモさがあるらしい。レトロ感がたまらないらしい。
そう言ってもらえると私としても嬉しい。そう見えるよう、私がレトロ加工を施しているのだから。
レトロ缶をシャカシャカと振り、シューっと吹きかける。
この吹きかけ加減が非常に難しい。薄いと歴史の浅さが浮き彫りとなり、濃いと途端に古臭くなる。
だから商品によって臭わせ加減を変える。レトロなメッキが剝がれないよう細心の注意を払う。
それを担当している私。レトロ缶の使い過ぎで実年齢よりずっと老けて見られる。
そんな私だが、最近恋人が出来た。
レトロ缶の効果で渋みの出た私。枯れ専にはたまらないそうだ。