十字路の悪魔

男はギタリストであった。
だが、どれだけ練習しても上達せず、夢が遠のいていた。
男は、焦りの中、十字路の悪魔と契約すると、寿命と引き換えに超絶技巧が手に入るという伝説に縋った。
男が夜中の12時に十字路でギターを奏でると、黒マントの男が現れ、男のギターを調律し、一曲演奏した。
黒マントの男は、男にギターを返し、闇に消えた。

それ以来、男のギターは冴えわたり、名声を得た。
だが、男の心から代償の恐怖が消える事はなかった。
ある夜、黒マントの男が男の家に現れた。
男は震えた。
そして、黒マントの男はフードを外した。
それは男の親友であった。
男の親友は、男に自信を取り戻させるために、悪魔のフリをして一芝居打ったのだ。

男は混乱しつつ尋ねた。
「でも、どうして俺のギターが上達したんだ？」
親友は言った。
「お前はいつも最高の音を出していた。ただ、自分の音を信じるきっかけが必要だっただけさ。」