再生する情熱

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汚部屋で広告を発見した。
《ご自宅に放置された情熱はありませんか?再生可能エネルギーとして買い取ります》
飽き性の私には、ある。これまで様々な趣味を貪ったが、どれも長続きせず本や道具がいたる所に散乱しているからだ。
早速業者を呼ぶ。査定の結果、10万円を受け取った。元を取れたかは微妙だが、物が無くなった分、部屋も心もすっきりした。

臨時収入を得た私は旅に出、そこで会った男と結婚。娘を生んだ。娘は色々な物を欲しがった。特に歯車をねだったが、歯車の何がいいんだか理解できず却下した。

20年後、娘はでんぐり返りの大会に出ると言い出した。

彼女は転がって行った。その柔軟な身体は馬よりもリニアよりも速く、やがて光をも追い越し――。

その姿に私は熱狂していた。こんな自分は初めてだった。
昔の私に必要だったのはあらゆる情熱を、何か一つにぶつける狂気だったのかもしれない。
その他
公開:25/05/14 21:30

紅石紗良( 北陸 )

思いついたアイデアの備忘録を兼ねて書いています。よろしくお願いします!
Talesで連作を執筆中です。鉱物や宝石にご興味がありましたらぜひご覧いただければと思います。
https://tales.note.com/creche_collage/wmnx0phfegkgm

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