はじめての

今年、神である私に捧げられたのは備蓄米だった。
私も長いこと神をやっているが備蓄米なんて初めてだ。神様に奉納する米と言えば、新米が当然とばかり思っていた。
まあ、人間にも事情があるのだろう。古米を奉納しないだけ良しとしよう。
それにこの備蓄米というものに私は幾分か興味があった。いつも食べている米とどれくらい差があるものか？
私は神だ。正直、舌は肥えている。だがそれと同時にジャンクフードの美味さも知っている。
初めてハンバーガーが奉納された日の衝撃は今でも覚えている。
そう言えば、米粉パンを奉納する人間もいたな。
長生きすると、初めてなんてないだろうと思われがちだが、それは逆だ。
長生きをしているからこそ、新しい発見や初めてのものに惹かれ、目を輝かせてしまう。
人間の営みとは進化の連続であり、その成長を喜ばぬ神などいない。
備蓄米を口にする。ブレンド珈琲のようなその味わいに思わず唸らされた。