名画でショート030『無題(1942~1943)』(ヴォルス)

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形状など、いまや何の意味も持たない。
それが始まったとき、3人の人間が目的地に向かって歩いているはずだった。
砂漠とも荒野とも言えない黄色い大地を、先頭の男性は左足を上げて、2番目のスカートの女性は静かに、3番目の性別不詳はうつむきながら、ただ歩いていた。
だが、この世界では形を意味をもたない。そのことを3人は身をもって体験することになる。
足を踏み込むたびに3人の姿は崩れていき、3人とも体の部位の区別もつかなくなり、服と肉体も溶け合い、一番後ろを歩いていた人間に至っては、体がふたつに分かれている。
それでも彼らは前に進もうとしている。
目的も意味も、その形状を失っているというのに。
その他
公開:24/10/25 16:45
更新:24/10/26 10:56

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