それはそれは

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 昨夜、窓から夜空を見上げていたら、流れ星を見つけた。私はとっさに、世界の平和を祈った。
 翌朝、学校に行くためにアパートの外に出ると、お隣の部屋に一人で住んでいるおばさんに声をかけられた。
「あなた、昨夜、流れ星に祈ってたでしょう、見たわよ」
「はい、祈っていました」
「あの流れ星、美味しかったわあ、きっとあなたの願いが良いスパイスになったのね、ありがとうね」
 あの流れ星食べちゃったのか、と私が絶句していると、おばさんは続けた。
「ところであなた、何を願ったの」
 私は、
「世界の平和です」
 とかすかに震える声で言った。
「あらあ、それはそれは……」
 おばさんは気まずそうに言うと、口に手を当て、こみ上げてくるげっぷを隠した。
ファンタジー
公開:24/10/24 14:18

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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